行政法 行政法総論

行政裁量をわかりやすく解説。要件裁量効果裁量・裁量権逸脱濫用判例等

この記事は「行政裁量」について行政書士試験対策向けにわかりやすく解説しています。

行政裁量の意味

行政作用の中でも、行政行為は、ジャイアンような「ザ・パワー」な行為なので、
繰り返すようですが、法律にその内容が定められていなければ実行に移すことはできません。

しかし、法律で行政の活動すべてを規定することができないため、行政機関には一定の範囲において裁量(行政庁自身で判断し処置すること)が認められています。
これが「行政裁量」です。

Mr.OK(著者)
あまりにガチガチに固めすぎると、行政という「国家の実働部隊」においては、社会変化や地域・事象等で本当にさまざま対応が求められるので、
「ガチガチに固めすぎて国民が不利益を被る」こともあるので、「行政に裁量を認めすぎてもダメだけど、ちょっとだけフレキシブルな部分はあったほうがいいよね!」っていうのがこの行政裁量の基本的スタンスです。

とはいえ、「行政裁量」が認められるにしても、どこまでも認めてしまうわけには当然いかないので、当然、その制限が発生します。
裁量の範囲とはどこまで認められるのでしょうか??

行政裁量の範囲の基本。行政裁量の司法審査はどこまで及ぶのか?

法律が一定の行政裁量を認めているため、裁量の範囲内の行為であれば、問題は生じないとされていますが、裁量によって自由に判断できてしまうと、問題が発生することもあります。その際は、当然裁判所に判断をゆだねることも発生する可能性があるわけですが、
行政裁量に対する司法審査は、「裁量権の逸脱又は濫用」がある場合に限られています。

「裁量権の逸脱」:与えられた権限を越えること(要は”そこまでやれとは言ってない”)
「裁量権の濫用」:与えられた権限の範囲内ではあるものの、妥当性に欠けること(要は”やれとは言ったけど、やりすぎ”)

これが基本スタンスになります。

「裁量権の逸脱又は濫用」があると、行政裁量は認められないということになります。

これが基本的な行政裁量の範囲です。では、もう少し細かく見ていきます。

裁量の範囲:要件裁量と効果裁量

行政行為に裁量が認められるとしても、範囲はどこまでも認められるわけではありません。
基本的にどこまで裁量が認められるかは「判例」をもとに考えます。

Mr.OK(著者)
基本的に法は「判例」が一番の教科書でしたね!

そしてその裁量は、以下4つに分類できます。

・法律「要件」の部分に裁量を認めるのか(要件裁量
・法律「効果」の部分に裁量を認めるのか(効果裁量
効果裁量において、
→そもそも行政行為をするかしないかの裁量(決定裁量
→どのような行為を選択するのか(選択裁量

Mr.OK(著者)
「要件裁量」は「要件の部分に裁量が認められてる」ということ。
「効果裁量」は「発生する効果の部分に裁量が認められてる」ということetcです。

要は、法律の要件の部分に裁量が認められれば「要件裁量」、法律の効果の部分に裁量が認められれば「効果裁量」と
カテゴリできるだけの話です。

少しわかりにくいので例を挙げて説明してみます。

例:国家公務員法82条1項の裁量分類

たとえば国家公務員法82条1項についても裁量が認められる部分があります。

■国家公務員法82条1項職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分選択裁量)をすることができる決定裁量効果裁量

3号 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合(要件裁量

懲戒処分を「できる」と規定していることから、行政庁は国家公務員に対して懲戒をするかどうかの裁量が認められていることになります。
「懲戒」という「法律効果」に裁量が認められているので「効果裁量」があるということになります。

Mr.OK(著者)
「できる」というのは「してもしなくてもどっちでもいいけど、しようと思えばしてもいい」ということですよね!
つまり「するかしないかはあなた次第」という意味なので「裁量がある」ということ!

さらに、本条1項本文ではそもそも懲戒処分をするか否かの裁量(決定裁量)、「免職、停職、減給又は戒告」のいずれかを選択するのかという裁量(選択裁量)についても規定されています。

3号をでは、「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行」とは何なのかについて判断をする「法律要件」について裁量が認められています。すなわち「要件裁量」が認められています。

要件裁量が認められた判例

判例:マクリーン事件(最大判昭53・10・4)

出入国管理令が原則として一定の期間を限って外国人のわが国への上陸及び在留を許しその期間の更新は法務大臣がこれを適当と認めるに足りる相当の理由があると判断した場合に限り許可することとしているのは、法務大臣に一定の期間ごとに当該外国人の在留中の状況、在留の必要性・相当性等を審査して在留の許否を決定させようとする趣旨に出たものであり、そして、在留期間の更新事由が概括的に規定されその判断基準が特に定められていないのは、更新事由の有無の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広汎なものとする趣旨からであると解される
行政庁がその裁量に任された事項について裁量権行使の準則を定めることがあっても、このような準則は、本来、行政庁の処分の妥当性を確保するためのものなのであるから、処分が右準則に違背して行われたとしても、原則として当不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない。

Mr.OK(著者)
要は、在留ビザを更新するかしないかの判断は「法務大臣の裁量の範囲内」だと裁判所が認めています。
要は「どうだったら在留ビザがもらえるのか・更新できるのか」という要件について、法務大臣(行政)の裁量を認めているわけですね。

判例:伊方原発訴訟(最判平4・10・29)

原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。

効果裁量が認められた判例

判例:神戸税関事件(最判昭52・12・20)

公務員につき、国公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきである。もとより、右の裁量は、恣意にわたることを得ないものであることは当然であるが、懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。

行政裁量が認められない(違法判断された)判例

行政庁の裁量処分については、「裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合」に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができます(行政事件訴訟法30条)。
このように裁量処分の「逸脱・濫用」があった場合には違法の判断がなされるし、また、法の一般原則に反する裁量処分の場合もやはり違法の判断がなされることになるでしょう。以上は、裁量権行使の結果に対する判断ですが、その他に行政が裁量権行使をする判断過程において、審査をするケースも増えてきています。

以下では、これらの統制基準について解説することとします。

事実誤認

裁量権を行使するための前提条件として、正当な事実認定に基づくことが要求されます。
この事実認定に誤認がある場合には、当該処分も違法と考えるものです。

前掲した判例(マクリーン事件)においては、「その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか」について審理をし、それが認められる場合に、当該判断が裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法となると判示しています(最大判昭53・10・4)。

目的拘束違反・動機の不正(他事考慮)

法律の趣旨や目的と異なる目的で裁量処分をするように、処分をするにあたり考慮してはならない事情を考慮して行った裁量処分を違法とするものです。

判例:最判昭53・6・16 個室付風呂営業不許可処分

「児童福祉施設の近隣では、個室付浴場の営業をしてはならない」という児童福祉法の規制を利用して、異例の速さで児童福祉施設の設置申請を認可し、近隣で営業していた個室付浴場が同法違反により営業停止処分を受けてしまったが、行政権の濫用だとして不許可処分が違法だとされた。

本来、児童遊園は、児童に健全な遊びを与えてその健康を増進し、情操をゆたかにすることを目的とする施設なのであるから、児童遊園設置の認可申請、同認可処分もその趣旨に沿ってなされるべきものであって、被告会社の個室付浴場営業の規制を主たる動機、目的とするa町のb児童遊園設置の認可申請を容れた本件認可処分は、行政権の濫用に相当する違法性があり、被告会社の個室付浴場営業に対しこれを規制しうる効力を有しないといわざるをえない。

Mr.OK(著者)
「個室風呂営業をさせないために、児童遊園を許可する」というのは、児童遊園許可の目的に反するってことですね。
要は個室風呂店舗(ソー〇ランド)を出店させないために行政が嫌がらせしたわけです。これをきちんと裁判所は「ダメ!」と判断してくれてるわけです。

法の一般原則違反

法の一般原則については、すでに解説をしていますが、この原則が行政裁量の統制においてはよく活用されます。

判例:食管法違反事件

食料管理法により拠出の割当をする際に、特定の個人を差別的に取り扱うことは「平等原則」に違反するとしています。

供出割当の方法については、「市町村長が、知事の指示に従い、食糧調整委員会の議決を経て、供出割当数量を定め、遅滞なくこれを生産者に通知する」との趣旨の定めがあるにとどまり、その方法として、いわゆる事前割当の方法(生産開始前に予め部落内の生産者相互の協議を経て割当額を決定通知する方法)によるべきかどうか、また割当通知の時期を何時とすべきか等については、何等具体的な定めがなかったことは明らかである。従って、これらの点についてどのような措置をとるかは、一応、行政庁の裁量に任されていたものと解さざるを得ない。もっとも、かような場合においても、行政庁は、何等いわれがなく特定の個人を差別的に取り扱いこれに不利益を及ぼす自由を有するものではなく、この意味においては、行政庁の裁量権には一定の限界があるものと解すべきである。

判断過程審査

行政庁が裁量行為を判断する過程において、それが合理性を有しているかどうかで審査する方法を採用する判例もあります。

判例:呉市学校施設使用不許可事件(最判平18・2・7)

公立学校施設の目的外使用の不許可処分について、その判断過程が社会通念に照らして著しく妥当性を欠いていると判断されました。

管理者の裁量判断は、許可申請に係る使用の日時、場所、目的及び態様、使用者の範囲、使用の必要性の程度、許可をするに当たっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度、代替施設確保の困難性など許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるものであり、その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が,重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものと解するのが相当である。
上記の諸点その他の前記事実関係等を考慮すると、本件中学校及びその周辺の学校や地域に混乱を招き、児童生徒に教育上悪影響を与え、学校教育に支障を来すことが予想されるとの理由で行われた本件不許可処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる。

さらに詳しく

判例:日光太郎杉事件(東京高判昭48・7・13)

高度に文化的価値がある太郎杉を含んだ日光東照宮の境内内にある土地について、当時の建設大臣が国道拡張工事を目的とした土地収用の認定事業を行い、これを受けて栃木県の収用委員会が収用裁決をしました。それに対し、所有者である日光東照宮が、事業認定と収用裁決の取消しを求めて出訴しました。裁判所は、判断過程において考慮すべき事項を考慮せずに処分をしたもので処分を違法としました。

 本件事業計画が土地収用法20条3号にいう「土地の適正且つ合理的な利用に寄与するもの」と認められるべきかどうかについての、控訴人建設大臣の判断の適否につき考察する。控訴人建設大臣が、この点の判断をするについて、ある範囲において裁量判断の余地が認めらるべきことは、当裁判所もこれを認めるにやぶさかではない。しかし、この点の判断が前認定のような諸要素、諸価値の比較考量に基づき行なわるべきものである以上、同控訴人がこの点の判断をするにあたり、本来最も重視すべき諸要素、諸価値を不当、安易に軽視し、その結果当然尽すべき考慮を尽さず、または本来考慮に容れるべきでない事項を考慮に容れもしくは本来過大に評価すべきでない事項を過重に評価し、これらのことにより同控訴人のこの点に関する判断が左右されたものと認められる場合には、同控訴人の右判断は、とりもなおさず裁量判断の方法ないしその過程に誤りがあるものとして、違法となるものと解するのが相当である。

判例 エホバの証人退学処分事件(最判平8・3・8)

公立高校において信仰上の理由により剣道実技に参加しなかった学生に対して(エホバの証人という宗教では剣道をしてはいけない教えだった)校長が行った原級留置処分及び退学処分について、その措置の判断過程において考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠いているとして、本処分が裁量権の範囲を超え、違法であると判示しています。

信仰上の理由による剣道実技の履修拒否を、正当な理由のない履修拒否と区別することなく、代替措置が不可能というわけでもないのに、代替措置について何ら検討することもなく、体育科目を不認定とした担当教員らの評価を受けて、原級留置処分をし、さらに、不認定の主たる理由及び全体成績について勘案することなく、2年続けて原級留置となったため進級等規程及び退学内規に従って学則にいう「学力劣等で成業の見込みがないと認められる者」に当たるとし、退学処分をしたという上告人の措置は、考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものと評するほかはなく、本件各処分は、裁量権の範囲を超える違法なものといわざるを得ない。

ポイントメモ

・行政には行政裁量が法律で認められている
・とはいえ、どこまでも裁量が認められているわけではなく「裁量権の逸脱濫用があった場合は違法・無効」であるとされている。

-行政法, 行政法総論
-