判例解説

個室付風呂営業不許可処分(最判昭53.5.26)をわかりやすく解説

「個室付風呂営業不許可処分(最判昭53.5.26)」の判例と論点についてわかりやすく解説しています。

概要

事件名 個室付風呂営業不許可処分(最判昭53.5.26)
範囲 憲法・行政法
公的URL https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=50195

Q.個室付き浴場の開業阻止のために、知事が行った児童園設置認可処分は国家賠償法上違法となるか?

Mr.OK(著者)
Xは個室付き浴場(要はソープ風俗店)の営業許可を申請しようとしたが、それを阻止するために、
知事が児童園設置許可を出して、Xの許可申請を不許可とした。
これに対し、Xは「知事の判断は営業許可を防止するために、わざと他の児童園の営業許可をだして妨害した、違法な公権力の行使だ!」と言って出訴。

事案整理・解説

Xは、個室付浴場業(ソープ風俗店)を営業するため、山形県に土地を購入し、個室付浴場業用の建物の建築確認の申請をし、建築確認を得た上で、建物の建築を完成させた。また、個室付浴場業の営業許可についても、Xは受けていた。ところが地元住民から反対運動が起こったため、山形県は、個室付浴場業の開業を阻止するための方法を考えた。それは、風俗営業等取締法(風営法)に「児童福祉施設から200m以内では、個室付浴場業の営業を禁止する」という法律があるため、それを逆手に利用することであった。

そこで、知事Yは、Xの個室付浴場から200m以内にある無認可の児童遊園に対し、認可を与え、
Xの個室付き浴場の営業を、風営法違反により、実質的にできないようにした。

しかし、Xはすでに土地購入や認可を得た上で浴場も開設完了していたため個室付浴場業の営業を開始した。
それによって、Xは知事Yより業務停止処分を受けた。

そこで、Xは処分の取消訴訟を提起した。(訴訟係属中に、営業停止処分期間が経過したため、途中国家賠償請求の訴えに変更)

事案の法的論点

個室付き浴場の開業阻止のために、知事が行った児童園設置認可処分は国家賠償法上違法となるか?

判決

Q.個室付き浴場の開業阻止のために、知事が行った児童園設置認可処分は国家賠償法上違法となるか?

A.違法。行政権の濫用である。

行政権の濫用にあたり、違法

「児童福祉施設の近隣では、個室付浴場の営業をしてはならない」という児童福祉法の規制を利用して、異例の速さで児童福祉施設の設置申請を認可し、近隣で営業していた個室付浴場が同法違反により営業停止処分を受けてしまったが、行政権の濫用だとして不許可処分が違法だとされた。

本来、児童遊園は、児童に健全な遊びを与えてその健康を増進し、情操をゆたかにすることを目的とする施設なのであるから、児童遊園設置の認可申請、同認可処分もその趣旨に沿ってなされるべきものであって、被告会社の個室付浴場営業の規制を主たる動機、目的とする児童遊園設置の認可申請を容れた本件認可処分は、行政権の濫用に相当する違法性があり、被告会社の個室付浴場営業に対しこれを規制しうる効力を有しないといわざるをえない。

Mr.OK(著者)
「個室風呂営業をさせないために、児童遊園を許可する」というのは、児童遊園許可の目的に反するってこと。
要は個室風呂店舗(ソー〇ランド)を出店させないために行政が嫌がらせしたわけです。これをきちんと裁判所は「ダメ!」と判断してくれてるわけです。

まとめ:

・風俗営業させないために、児童園の設置認可をして、
・実質的に、風俗営業させないようにした知事の「風俗営業不許可処分」は
・行政権の濫用であり違法である。

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