「エホバの証人剣道受講拒否退学処分事件(最判平8.3.8)」の判例と論点についてわかりやすく解説しています。

概要
| 事件名 | エホバの証人剣道受講拒否退学処分事件(最判平8.3.8) |
| 範囲 | 憲法・行政法 |
| 公的URL | https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55882 |
・公立高校において信仰上の理由により剣道実技に参加しなかった学生Xに対して(エホバの証人という宗教では剣道をしてはいけない教えだった)
・つまりXは宗教上の理由でやむをえず剣道の受講のみできなかった。
・しかし、Xは他科目は優秀で、しかも剣道の授業もレポートの提出等代替手段をお願いしていた(にもかかわらず学校はそれを拒否していた)
・剣道を受講しないXに対し、当該校長Yが、行った原級留置処分及び退学処分を行った。
・XがYに対し「信教の自由の侵害」として出訴

事案整理・解説
本判例のポイントはおもに3つ。
校長の原級留置処分及び退学処分は裁量の範囲内なのか?
高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであり、
・処分については、校長の合理的な裁量の範囲内である。
原則、校長は裁量の範囲内で、生徒に対し原級留置処分や退学処分ができる。
校長による処分は、校長の裁量の範囲を超え違法なのかどうか?
裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきものではなく、校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものである。
・とはいえ、それを裁判所がその処分の可否を判断するのには、
・校長と同一の立場にたって判断するものではなく、
・全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべき
校長の裁量の逸脱濫用があれば違法になる。
本件の場合、校長YがXに対して行った処分は、
同人がレポート提出等の代替措置を認めて欲しい旨申し入れていたのに対し、学校側は、代替措置が不可能というわけでもないのに、これにつき何ら検討することもなく、右申入れを一切拒否したなど判示の事情の下においては、右各処分は、社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超える違法なものというべきである。
違法である。
校長Y側が主張した「生徒の主張を認めると政教分離違反になる」と言う主張は?
憲法20条3項「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」
エホバの証人を理由に受講拒否をしたXに代替措置を講ずると、それは宗教活動に学校が加担することになるのではないか?
という学校側の主張に対し、
代替措置を講じることは特定の宗教に対する援助をするわけではない
とした。

それは学業を主目的とするもので、宗教の援助を主目的にするものではないので、宗教の援助にあたるものではない!ということ。
判決
Q.宗教上の理由で、特定科目を履修できない生徒に、代替措置等を講ずることなく、原級留置処分や退学処分を行うことは・・・
A.違法。
まとめ:

・原級留置処分や退学処分は校長の裁量の範囲内だが、
・特定の宗教を理由に、特定の科目を履修できない生徒に対して、代替措置等一切講ずることなく処分をするのは、
・社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超える違法なものというべき。
・また、代替措置を講ずることでは、特定の宗教の援助をするということにもならない。