行政不服審査法 行政法

行政救済法概論。行政争訟と国家補償の定義・ちがい・分類ポイントをわかりやすく解説!

この記事は「行政救済法概論・行政争訟と国家補償のちがい等」について行政書士試験対策向けにわかりやすく解説しています。

行政救済法概論。行政救済法とは?定義・ポイント

行政活動で、国民の権利・利益が侵害される場合があります。
このときに国民が行政の活動の是正や賠償を求めるための法律がありこれらを「行政救済法」と呼んでいます。
この記事では、数ある行政救済法たちの概論を説明しています。
(法律を勉強していると、何をいま学んでいて、それがどういう位置にあるものなのかを
立体的にとらえる必要があり、概論の勉強もとても大切です!)

Mr.OK(著者)
行政からの違法または不当な侵害行為に対して、救済手段を定める法律のことを
まとめて「行政救済法」と呼んでいます。行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法、損失補償法などがあり、
これらは他記事で細かく書いています。

頻出というか「行政書士試験の本丸」の分野なので、
絶対に知識の取りこぼしのないようにしておきましょう!!!

・行政救済法=行政争訟・国家補償
・行政争訟
:行政機関による違法または不当な活動の是正を求める手段。「(行政上の)不服申立て」「行政訴訟」がある。
国家補償:行政活動によって生じた損害や損失の補償を求める手段。「国家賠償」「損失補償」がある。

【行政争訟】行政訴訟と行政上の不服申立て

行政上の不服申立て:違法または不当な行政活動について、行政機関の判断により是正(一般法:行政不服審査法
行政訴訟:違法(×不当)な行政活動について、裁判所の判決により是正(一般法:行政事件訴訟法

Mr.OK(著者)
不服申し立て制度のほうがちょっと軽め、裁判所を経由する行政訴訟はおおがかり!というイメージでOK。
不当か違法で不服な場合は行政不服審査法が、違法な場合は行政事件訴訟法が一般法として機能してくれています。
不当というのは「違法とまではいわない(言えるかわからない)けどおかしい!!」ことを不当と言います。
裁判所を経由する行政訴訟の場合は不当な場合は無理で「違法」な場合しか、使うことはできない手段です。この違いは重要です!

いずれにしても、行政上の不服申し立て、行政訴訟ともに、おかしな行政活動から国民を救済する仕組み
なのです!
一般法 対象となる行政活動 管轄
行政上の不服申し立て 行政不服審査法 違法または不当 行政機関
行政訴訟 行政事件訴訟法 違法のみ(×不当) 裁判所

不服申し立てと行政訴訟どちらをとる?「自由選択主義」と「審査請求前置主義」について

では、実際に行政活動により不利益を被ったとき、「申し立て」なのか「訴訟」なのか、
どちらを選択するのか?ということですが、
この両制度のどちらをとるかは、原則として自由です。
これを「自由選択主義」と言います。

原則:不服申し立てをしても、訴訟をしてもどちらでもいい。(自由選択主義)
例外:不服申立ての判断(裁決)が出た後に行政事件訴訟を起こさなければならないものもあります(審査請求前置主義)

Mr.OK(著者)
基本的には自由選択主義(文字通り)ですが、
個別法によっては「裁決のあとにしか行政訴訟ができない」と規定する法律もあり、
その場合のみ例外的に「不服申し立てで裁決を得た後でなければ、行政訴訟できない」ことになります。
これを「審査請求を前に置く主義」なので「審査請求前置主義」と呼んでいます。記述でも出たことがあるのでおさえておきましょう!

※不服申し立ての判断は「裁決(さいけつ)」といいます。行政訴訟の判断は裁判所が行うので「判決(はんけつ)」です。

Mr.OK(著者)
不服申し立ては、行政機関が行う「裁判所ごっこ」のようなものなので、
裁判所のくだす判断=判決とは異なるので「裁決」と言います。
裁決は、行政機関の裁判所ごっこの結果で、裁判所でいうところの判決のようなものです。

【国家補償】国家賠償と損失補償


国家補償には「国家賠償」「損失補償」があります。

・国家賠償:行政機関の違法な活動によって生じた損害を賠償する制度(一般法:国家賠償法)
・損失補償:行政機関の適法な(合法な)活動によって生じた財産的損失を補償する制度(一般法はない)

Mr.OK(著者)
お金が絡んでくるわけですね!損失補償に関しては一般法がない点はたまーに出るので要注意!

国家補償には「国家賠償」と「損失補償」がありますが、細かいことは別記事で詳しく説明していますが、
国家賠償:行政の違法な行政活動を対象
損失補償:行政の適法な行政活動を対象
というちがいがあります。

損失補償には一般法がないため、基本的には個別法に損失補償に関する規定がある場合が多いです。
が、個別法にも規定がない場合、損失補償できないのでは??と思うかもしれませんが(思わない人もいるかもしれませんが)
それは、判例でこのように出ています。

補償規定が個別の法にない場合には憲法29条3項に基づいて直接補償を求めることも可能である(最大判昭43・11・27)。

憲法29条3項は・・・

憲法第二十九条

1・財産権は、これを侵してはならない。
2・財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3・私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

これを根拠に請求できるとあるので、一般法がなくても個別法に規定がなくても、損失補償を請求できる余地はあるということです。

行政争訟と国家補償(国家賠償・損失補償)の関連性

行政争訟と国家補償は、両方とも行政から救済してもらえる方法ですが、国家補償の場合、「補償」なのでお金が絡んできます。

もう少しわかりやすくいうと、

・行政争訟(不服申し立てや行政訴訟):違法性や不当性を認定してもらうことで、行政にその活動やめてー!とか「やってないことやれやー!」と言える
・損失補償(国家賠償や損失補償):違法性を認定してもらうことで、損失を補償しろ!!!と言える

こういう違いがあります。

また、国会賠償請求するにあたって、まずは行政訴訟を提起して違法の判決(取消または無効の判決(行政事件訴訟法の記事で詳しく解説してます)を得てからでないとできないという制限はなく、
はじめから国家賠償請求してもいいです。判例でもあります。

国家賠償請求をするために、あらかじめ行政訴訟を提起して、その(取消し又は無効の)判決を得なければならないというものではない(最判昭36・4・21、最判平22・6・3)。

Mr.OK(著者)
国家賠償を求めたい!!という場合に、最初に「行政訴訟」で「この行政機関の行為は違法だ!!!」と確定してからでないとできないということではなく、
国家賠償訴訟の中で違法性を争ってもいいよ!ということです。(もちろんそれができない場合もありますが、ここでは割愛)

まとめ:行政救済法の頻出ポイント

・行政救済法=行政争訟・国家補償
・行政争訟
:行政機関による違法または不当な活動の是正を求める手段。「(行政上の)不服申立て」「行政訴訟」がある。
国家補償:行政活動によって生じた損害や損失の補償を求める手段。「国家賠償」「損失補償」がある。

一般法 対象となる行政活動 管轄
行政上の不服申し立て 行政不服審査法 違法または不当 行政機関
行政訴訟 行政事件訴訟法 違法のみ(×不当) 裁判所

・自由選択主義と審査請求前置主義
原則:不服申し立てをしても、訴訟をしてもどちらでもいい。(自由選択主義)
例外:不服申立ての判断(裁決)が出た後に行政事件訴訟を起こさなければならないものもあります(審査請求前置主義)
・損失補償に一般法はないが、個別法に定めがなくても、憲法29条3項を根拠に請求できる余地がある。
国家賠償請求をするために、あらかじめ行政訴訟を提起して、その(取消し又は無効の)判決を得なければならないというものではない

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