命令等を定める場合の一般原則
原則
命令等を定める場合には、次の2つの原則を守らなければならないと規定されています。
命令等制定機関は、命令等を定めるに当たっては、当該命令等がこれを定める根拠となる法令の趣旨に適合するものとなるようにしなければならない(法的義務。38条1項)。
根拠となる法令の趣旨と適合していないといけません。
・命令等制定機関:命令等を制定する行政機関
・命令等:政令・省令・府令など

命令等制定機関は、命令等を定めた後においても、当該命令等の規定の実施状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、必要に応じ、当該命令等の内容について検討を加え、その適正を確保するよう努めなければならない(努力規定。38条2項)。
社会状況の変化に応じて命令を適宜変更、適正化するように努めなければなりません。

社会情勢の変化に応じて内容を適宜修正等するよう努めなきゃだめだよー!っというごく当たり前の話です。
【例外】一定の性質を有する命令を定める行為の適用除外
ただし、例外もあります。意見公募手続きが適用されない性質を有する命令等もあります。
法律の施行期日について定める政令
恩赦に関する命令
命令又は規則を定める行為が処分に該当する場合における当該命令又は規則
法律の規定に基づき施設、区間、地域その他これらに類するものを指定する命令又は規則
公務員の給与、勤務時間その他の勤務条件について定める命令等
審査基準、処分基準又は行政指導指針であって、法令の規定により若しくは慣行として、又は命令等を定める機関の判断により公にされるもの以外のもの
また、
行政組織内部や行政主体相互間の関係についての命令等で、直接国民の権利義務とかかわらないものは、
意見公募手続等の規定が適用されません(4条4項)。
意見公募手続の定義・流れ・ポイント
意見公募手続とは?
意見公募手続き:意見公募手続制度は、国の行政機関が命令等(政令、省令など)を定めようとする際に、事前に、広く一 般から意見を募り、その意見を考慮することにより、行政運営の公正さの確保と透明性の向上を図り、 国民の権利利益の保護に役立てることを目的としている。
命令等制定機関は、命令等を定める場合には、以下のような「意見公募手続き」を踏まなければなりません。
命令等の案の作成と意見の公募
命令等を定めるにあたって、命令等の原案を作成し、「この命令等はどうか?どう思うか?問題点はないか?」などの意見を広く一般に求めなければなりません。
命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案(例:政令案・省令案)及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見(情報を含む。)の提出先及び意見の提出のための期間(意見提出期間)を定めて広く一般の意見を求めなければならない(法的義務。39条1項)。
・広く一般の意見を求める:日本国民に限らず、外国人、法人(外国企業も含む)も対象
命令等の原案については、
具体的かつ明確な内容のものであって、かつ、当該命令等の題名及び当該命令等を定める根拠となる法令の条項が明示されたものでなければならない(39条2項)。

定めることができない抑止力になってるわけです。
変な原案が提出されると批判殺到になりますからね。まさに行政の暴走を抑止するための制度なのです。
意見提出期間
命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合において、30日以上の意見提出期間を定めることができないやむを得ない理由があるときは、前条第三項の規定にかかわらず、30日を下回る意見提出期間を定めることができる。この場合においては、当該命令等の案の公示の際その理由を明らかにしなければならない。
意見提出期間については、公示の日から起算して30日以上でなければならないですが、
やむを得ない理由がある場合には、30日を下回る期間を定めることも可能です。
ただし、
30日を下回る意見提出期間を定めた場合においては、当該命令等の案の公示の際その理由を明らかにしなければならない(40条1項)。
30日を下回る期間を定めた場合には(29日以下の期間)、その理由を明らかにしなければなりません。

ただし、29日以下の期間を定めることもできるけど、その場合は「なぜ29日以下なのか」という理由を明らかにしなければダメ!
例:意見公募手続きの期間を15日とする(29日以下)。その理由は緊急を要するためである(理由)
基本は30日以上!例外もあるけどその場合は理由いる!と覚えておきましょう。
意見公募手続の適用除外
次の場合は、意見公募手続をする必要性や合理性がないため、意見公募手続の適用除外とされています。
・公益上、緊急に命令等を定める必要があるため、意見公募手続を実施することが困難であるとき。
・納付すべき金銭について定める法律の制定又は改正により必要となる当該金銭の額の算定の基礎となるべき金額及び率並びに算定方法についての命令等その他当該法律の施行に関し必要な事項を定める命令等を定めようとするとき。
・予算の定めるところにより金銭の給付決定を行うために必要となる当該金銭の額の算定の基礎となるべき金額及び率並びに算定方法その他の事項を定める命令等を定めようとするとき。
・法律の規定により、内閣府設置法や国家行政組織法に規定する委員会又は内閣府設置法や国家行政組織法に規定する機関(以下「委員会等」という。)の議を経て定めることとされている命令等であって、相反する利害を有する者の間の利害の調整を目的として、法律又は政令の規定により、これらの者及び公益をそれぞれ代表する委員をもって組織される委員会等において審議を行うこととされているものとして政令で定める命令等を定めようとするとき。
・他の行政機関が意見公募手続を実施して定めた命令等と実質的に同一の命令等を定めようとするとき。
・法律の規定に基づき法令の規定の適用又は準用について必要な技術的読替えを定める命令等を定めようとするとき。
・命令等を定める根拠となる法令の規定の削除に伴い当然必要とされる当該命令等の廃止をしようとするとき。
・他の法令の制定又は改廃に伴い当然必要とされる規定の整理その他の意見公募手続を実施することを要しない軽微な変更として政令で定めるものを内容とする命令等を定めようとするとき。

公益上緊急を要する、すでに意見公募手続きを実施して定められた命令等と実質的に同じ内容の命令等を定める際は
意見公募手続きをする必要はありません!この2つは必ず覚えておきましょう!
意見公募手続の周知等
命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めるに当たっては、必要に応じ、当該意見公募手続の実施について周知するよう努めるとともに、当該意見公募手続の実施に関連する情報の提供に努める(41条)。
意見公募手続きの実施とそれに関する情報提供義務があります。

意見公募手続きなわけですから。意見公募手続きやるよー!!って周知しなければ意味がないです。なので意見公募手続き自体の周知義務も、行政機関に課されているわけですね!
提出意見の考慮
命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、意見提出期間内に当該命令等制定機関に対し提出された当該命令等の案についての意見(提出意見)を十分に考慮しなければならない(42条)。
考慮をしたかどうかについて、提出意見を考慮した結果及びその理由を公示する義務が課されています(43条1項4号)。

理由の提示義務はだいたいの行政法の各種法で設定されています。
結果の公示等
命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布(公布をしないものにあっては、公にする行為。第5項において同じ。)と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければならない。
一 命令等の題名
二 命令等の案の公示の日
三 提出意見(提出意見がなかった場合にあっては、その旨)
四 提出意見を考慮した結果(意見公募手続を実施した命令等の案と定めた命令等との差異を含む。)及びその理由
命令等制定機関は、必要に応じ、上記の提出意見に代えて、当該提出意見を整理又は要約したものを公示することができます。
この場合においては、当該公示の後遅滞なく、当該提出意見を当該命令等制定機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしなければならない(43条2項)。
提出意見を公示し又は公にすることにより第三者の利益を害するおそれがあるとき、その他正当な理由があるときは、当該提出意見の全部又は一部を除くことができます(43条3項)。
命令等制定機関は、前項の規定にかかわらず、必要に応じ、同項第三号の提出意見に代えて、当該提出意見を整理又は要約したものを公示することができる。この場合においては、当該公示の後遅滞なく、当該提出意見を当該命令等制定機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしなければならない。(43条4項)。
意見公募手続を実施しないで命令等を定める場合の措置
命令等制定機関は、前二項の規定により提出意見を公示し又は公にすることにより第三者の利益を害するおそれがあるとき、その他正当な理由があるときは、当該提出意見の全部又は一部を除くことができる。
命令等制定機関は、意見公募手続を実施したにもかかわらず命令等を定めないこととした場合には、その旨(別の命令等の案について改めて意見公募手続を実施しようとする場合にあっては、その旨を含む。)並びに第
命令等制定機関は、第39条第4項各号のいずれかに該当することにより意見公募手続を実施しないで命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければならない。ただし、第一号に掲げる事項のうち命令等の趣旨については、同項第一号から第四号までのいずれかに該当することにより意見公募手続を実施しなかった場合において、当該命令等自体から明らかでないときに限る。一 命令等の題名及び趣旨
二 意見公募手続を実施しなかった旨及びその理由
公示の方法
公示は総務大臣が定め、インターネット上のホームページでの掲載など情報通信の技術を利用する方法により行います。
まとめ:意見公募手続きのポイント
・命令等制定機関:命令等を制定する行政機関
・命令等:政令・省令・府令など
・命令等制定機関が命令等を定める際は「意見公募手続き」をしなければならない(※適用除外除く)
・機関は30日以上
・29日以下を定めてもいいけど、その場合は必ず理由の提示必要
・命令等が緊急を要する、すでに意見公募手続きをされて制定された命令等と同様の命令等を制定する場合は意見公募手続きしなくていい