この記事は「行政機関の権限の代行・授権代理法定代理のちがい等」について行政書士試験対策向けにわかりやすく解説しています。
権限の代行の意味
行政機関が行政主体のために行う法律上の事務範囲のことを「権限」といいます。
この権限を本来行うべき行政機関ではなく、他の行政機関が代わって行使する場合があります。このことを権限の代行といいます。
権限の代行にはいくつか種類があり主に「代理・委任・専決代決」があります。それぞれ詳しくみていきます。
権限の代理
権限の代理は、民法の代理と同じ意味と考えてOKです。
民法の代理は・・・
代理人の行為が本人に効果帰属するものでした。
これを行政機関の権限の代理にあてはめると、
行政機関Aの権限を行政機関Bに代わりに行使させ、
その効力が行政機関A自体の行為として効力を生ずるのです。これが権限の代行です。
民法の代理で「任意代理」と「法定代理」があったように、
行政法でもこの権限の代理は「授権代理」と「法定代理」に分類できます。
民法の代理 | 行政機関の権限の代理 |
任意代理・法定代理 | 授権代理・法定代理 |
授権代理と法定代理
でるでるマーク!重要頻出
これ過去問でもまあまああります。不正解な人も多いので差がつくけどめっちゃ簡単!
代理関係 | 代理できる権限の範囲 | 法律の根拠 | 指揮監督権 | |
授権代理 | 授権によって生じる | 一部 | 不要 | あり |
法定代理 | 法律上当然に生じる | 一部または全部 | 必要(というか それがあるから法定代理) |
なし |
授権代理のほうが法定代理よりライトなイメージです。法律の根拠も不要です。(厳密には必要な場合もある。必ずしも必要がないということ)。
行政機関Aが行政機関Bを指揮監督することもできるのが「授権代理」です。
ただし「すべての権限を授権することはできない」です。

一方「法定代理」は授権代理よりヘビーなイメージです。「法定」なので「法律上当然に代理関係が発生」するので
「義務」に近いですよね。法律によって規定されるので、行政機関Aは行政機関Bを指揮監督することはできません。
「当然行政機関Bが代理するもの」だからです。

法定代理は行政機関Bが「法律上決められてるし、行政機関Aを代行する義務」というイメージでとらえると
わかりやすいと思います。
民法の代理でも法定代理といえば「親子関係」が代表例ですが、
「当然親が子を代理する」でしょ?
子供が親に「代理権を付与する」なんていちいち言わないのと同じイメージです。
授権代理も法定代理もあくまで「代理」なので、代行するのは行政機関Bですが、
「行政機関Aの行為となる」点は同じです。(もともとの行政機関の権限の譲渡や変動はない。)
権限の委任
次に権限の代行の「権限の委任」についてです。
権限の委任の場合は、民法の委任とは少し違います。
行政機関Aの権限の一部を行政機関Bに譲渡し、行政機関Bの行為として行うのです。
(行政機関Aの権限を行政機関Bが行うが、行政機関Aの行為となる「代理」とはこの点が異なる!)
権限の一部を譲渡をするということは、法律で定められている権限の範囲を変更するものであるため、
法の明示の根拠があり、かつ権限の範囲の変更が外部にわかるよう公示をしなければ行うことはできません。

行政が暴走する可能性がありますよね。なので直接行政機関Bの行為になる「委任」の場合は、
代理と異なって(授権代理の場合)、法律の根拠が絶対に必要なのです。
たとえば、警察が消防に「逮捕権」を勝手に委任したとして「消防が勝手に人を逮捕できるようなる」
なんてことになるわけがないですよね??そういう極端なイメージでとらえるといいですよ。
上級行政機関(委任機関)が、下級行政機関(受任機関)に対して権限を委任する場合は、
上級行政機関として下級行政機関の当該権限の行使を指揮監督することができます。
上下関係にない行政機関に対して権限の委任がされる場合、
委任機関は、受任機関を指揮監督することができません。(特段の定めがない限り)
専決・代決
行政補助機関が、行政庁の権限について、それを決裁することを専決・代決といいます。
専決も代決も、行政庁の決定として外部に表示するため、法律の根拠は不要です。
まとめ:代理と委任のちがいまとめ
めちゃでるマーク!最重要頻出
絶対覚えておこう
どこの行為か | 権限の譲渡変動 | 指揮監督権 | 法律の根拠 | |
権限の代理 | 行政機関A | なし | あり | 不要(法定代理の場合は当然ある) |
権限の委任 | 行政機関B | あり | 委任する側が上級 の場合はあり |
必要 |
きちんと理解すれば簡単だけど結構頻出する部分なので、きちんと学習マスターしておきましょう!