この記事は「行政調査」について行政書士試験対策向けにわかりやすく解説しています。
行政調査の意味
行政調査とは、行政上の決定をする際に、必要な情報の収集、分析などの調査をする事実行為のことをいいます。
行政法上の事実行為:行政機関の法律効果を有しない活動。

それが何か法的な効果を生んだりすることはない「単なる調査行為」って感じです。
行政調査の分類
行政調査については、任意調査と強制調査に分類されます。
・任意調査:調査の相手方の任意の協力により行う調査で。法律の根拠不要。
・強制調査:相手方の協力の可否関係なく、拒否した場合の罰則や実力行使がある調査。法律の根拠必要。
任意調査はどこまで許されるのか?任意調査の限界
任意調査は、法律の根拠不要&相手方の「任意の協力」によって実現できますが、
どの程度まで許容されるのか?重要判例を確認しておきます。
職務質問判例
判例 最判昭53・9・7
警職法2条1項に基づく職務質問に附随して行う所持品検査は、任意手段として許容されるものであるから、所持人の承諾を得てその限度でこれを行うのが原則であるが、職務質問ないし所持品検査の目的、性格及びその作用等にかんがみると、所持人の承諾のない限り所持品検査は一切許容されないと解するのは相当でなく、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、たとえ所持人の承諾がなくても、所持品検査の必要性、緊急性、これによって侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される場合があると解すべきである。これを本件についてみると、原判決の認定した事実によれば、巡査が被告人に対し、被告人の上衣左側内ポケットの所持品の提示を要求した段階においては、被告人に覚せい剤の使用ないし所持の容疑がかなり濃厚に認められ、また、同巡査らの職務質問に妨害が入りかねない状況もあったから、右所持品を検査する必要性ないし緊急性はこれを肯認しうるところであるが、被告人の承諾がないのに、その上衣左側内ポケットに手を差入れて所持品を取り出したうえ検査した同巡査の行為は、一般にプライバシイ侵害の程度の高い行為であり、かつ、その態様において捜索に類するものであるから、上記のような本件の具体的な状況のもとにおいては、相当な行為とは認めがたいところであって、職務質問に附随する所持品検査の許容限度を逸脱したものと解するのが相当である。

たとえ、緊急性が高い調査であったとしても、相手の協力がなければ行ってはいけない!
強制であってはいけない!ということ。
自動車検問判例
判例 最判昭55・9・22
警察法2条1項が「交通の取締」を警察の責務として定めていることに照らすと、交通の安全及び交通秩序の維持などに必要な警察の諸活動は、強制力を伴わない任意手段による限り、一般的に許容されるべきものであるが、それが国民の権利、自由の干渉にわたるおそれのある事項にかかわる場合には、任意手段によるからといって無制限に許されるべきものでないことも同条2項及び警察官職務執行法1条などの趣旨にかんがみ明らかである。しかしながら、自動車の運転者は、公道において自動車を利用することを許されていることに伴う当然の負担として、合理的に必要な限度で行われる交通の取締に協力すべきものであること、その他現時における交通違反、交通事故の状況などをも考慮すると、警察官が、交通取締の一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべきである。原判決の是認する第一審判決の認定事実によると、本件自動車検問は、右に述べた範囲を越えない方法と態様によって実施されており、これを適法であるとした原判断は正当である。

犯罪捜査と行政調査の関係性
行政調査は、あくまで「行政目的を達成するための調査」であるため、犯罪捜査のために行うことはできません。
こちらも重要判例があるのでおさえておきましょう。
判例 最決平16・1・20
旧法人税法156条によると、同法153条ないし155条に規定する質問又は検査の権限は、犯罪の証拠資料を取得収集し、保全するためなど、犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使することは許されないと解するのが相当である。しかしながら、上記質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならないというべきである。

だけど行政調査を行って出てきた証拠が後に犯罪の証拠になっちゃう場合は、それは証拠としてOKとなる場合もある!ということ。
要は、行政調査はあくまで行政調査で行うべきで、犯罪調査として行う場合は、
犯罪捜査として(犯罪捜査の手続きを踏んだうえで)行わなければならないよ!ということ。
だからといって、行政調査で何か証拠が出てきたとして、それを一切証拠にできないかというとそうではなくて、
後にある犯罪の重要証拠として過去の行政調査の証拠が使えそうなときは、使ってもいい場合はあるよ!ということ。