「マクリーン事件(最大判昭53・10・4)」の判例と論点についてわかりやすく解説しています。
概要
事件名 | マクリーン事件(最大判昭53・10・4) |
範囲 | 憲法・行政法 |
公的URL | https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53255 |
・外国籍のマクリーン(以後X)は、在留期間1年の許可を得て、日本に入国した。
・Xは日本在留中、ベトナム戦争反対運動や日米安保条約反対運動等政治活動を行った。
・その後在留期間の期限が迫ったため、Xは、法務大臣(以後Y)に対し、在留期間延長の申請をした。
・しかしYは、Xの「無断転職」および「政治活動」を理由に、120日の更新しか認めず、その後更新を不許可とした。
・そこで、XはYの更新不許可処分を不服として、その取消しを求めて出訴した。

事案整理・解説
本判例のポイントはおもに3つ。
在留期間の更新・許可不許可は、法務大臣の裁量の範囲内なのか?
出入国管理令が原則として一定の期間を限って外国人のわが国への上陸及び在留を許しその期間の更新は法務大臣がこれを適当と認めるに足りる相当の理由があると判断した場合に限り許可することとしているのは、法務大臣に一定の期間ごとに当該外国人の在留中の状況、在留の必要性・相当性等を審査して在留の許否を決定させようとする趣旨に出たものであり、そして、在留期間の更新事由が概括的に規定されその判断基準が特に定められていないのは、更新事由の有無の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広汎なものとする趣旨からであると解される。
行政庁がその裁量に任された事項について裁量権行使の準則を定めることがあっても、このような準則は、本来、行政庁の処分の妥当性を確保するためのものなのであるから、処分が右準則に違背して行われたとしても、原則として当不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない。
更新の許可不許可等、外国人の在留に関する判断は、法務大臣の裁量の範囲内だとしています。
ただし、その裁量権の逸脱濫用があった場合は、違法となります。
本件に関しては…↓
上告人(X)の本件活動は、そのなかにわが国の出入国管理政策に対する非難行動あるいはわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものが含まれており、法務大臣が右活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものということはできない。
法務大臣Yによる、裁量権の逸脱濫用があったとは言えないとしています。

でも逸脱濫用があったら違法!よくあるパターンというか、裁量権の理解の基本です。
「基本裁量あるけど、それを逸脱濫用したらダメ!!!」は絶対に覚えましょうね。
外国籍の人(外国人)に対して、憲法は「人権」を日本人と等しく保証しているのか?
基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべき
基本的人権の保障は、性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、外国人に対しても等しく及びます。

基本的人権について日本人も外国人も等しく保証しているということです。
ただし、性質上日本国民のみをその対象としているものは除きます。(生活保護受給とか)
外国籍の人(外国人)に対して、憲法は「政治活動の自由」を日本人と等しく保証しているのか?
政治活動の自由に関する憲法の保障は、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても及ぶ。
政治活動の自由も外国人には保証されています。
原則:政治活動の自由を外国人にも保証(日本人と等しく保証が及ぶ)
例外:日本の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものは外国人には保証は及ばない

実は外国人にも保証しています。これは結構初学者は!?となる部分かもしれませんが、憲法では基本的知識で、頻出の知識なので覚えておきましょう!
例外的に、外国人であっても、日本の政治的意思決定や日本の政治に邪魔になりそうな活動をする自由は外国人には認めませんよ!としています。
これを認めると「日本を転覆させたい」と思っている外国人がいたとして、そういう人の活動が認められて日本が壊滅しちゃう!でも憲法が保障してるからそれを阻止できない!
みたいな事態になるかもしれないから、当然です。
上告人(X)の本件活動は、外国人の在留期間中の政治活動として直ちに憲法の保障が及ばないものであるとはいえないが、そのなかにわが国の出入国管理政策に対する非難行動あるいはわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものが含まれており、法務大臣が右活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものということはできない。

今回のXに関しては、法務大臣Yの判断は「明白に合理性に欠き、その判断が社会通念上著しく妥当性に欠くことが明らかである」とはいえないので、
在留中の政治活動を理由に更新を不許可としたことは違憲ではない!となったわけです。
判決
Q. 外国人X(マクリーン)の政治活動を理由に、在留許可更新を拒否された、法務大臣の判断は違法なのか?
A.違法ではない。原告マクリーンの訴えは認められない。
まとめ:
・外国人在留許可に関する許可不許可は、法務大臣の裁量の範囲内
・ただし、そこに裁量権の逸脱濫用があれば違法
・今回の場合、外国人Xは日本国内で政治活動をしていた内容的に、法務大臣Yの判断は「明白に合理性に欠き、その判断が社会通念上著しく妥当性に欠くことが明らかである」とは言えず、
・Xの訴えは認められず、Yの判断は違法でもなく違憲でもない!!!
・ちなみに、基本的に、外国人にも日本人と等しく基本的人権・政治活動の自由が保障される。(日本人のみを対象とするような保証や、日本にとってヤバい活動をするなどはダメ等例外はある)