意思表示 民法

心裡留保と通謀虚偽表示。虚偽表示の第三者をわかりやすく解説。

この記事は「心裡留保と通謀虚偽表示」について行政書士試験対策向けにわかりやすく解説しています。

心裡留保とは?

心裡留保とは、表意者(意思表示する人)が、
真意でないことを知りながら(真実ではないと自覚して・真実でないとわかっているのに)する意思表示のことです。

例えば、AがBに対し土地を譲る意思がないのに、冗談で「この土地をタダであげるよ!」という意思表示をしたような場合です。

Mr.OK(著者)
本気では思ってないけど言っちゃう!みたいな意思表示のことです。
たとえば「100万円あげるよ!!!(冗談だけど)」って言う意思表示のことを「心裡留保」というのです。

心裡留保の効果

民法93条

意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。 ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

心裡留保は、原則として有効ですが、
相手方が悪意又は有過失であるときは無効となります。

なお、心裡留保による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができません(93条2項)。

Mr.OK(著者)
心裡留保は原則有効なので、
AがBに「やっぱり返して!」と無効を主張はできないのです。
でもBは悪意または有過失の場合は「無効だから返せ!」とAは主張できるということです。

(Bが悪意または有過失というのは・・・

Bが、Aが本当は冗談で言ってること(本意ではないこと)を知っている=悪意 の場合か、
Bが、Aが本当は冗談で言ってることを知ることができたとき(Aが冗談で言ってることを知らないことにBに落ち度がある)=有過失 の場合)

でも善意の第三者Cにはそれを言えない!ってことですね。
(悪意の第三者Cには言えるってことです。)

AB間が仮に無効or有効だったとしても、第三者CがAの心裡留保について知らなかったとき(無過失は不要)は
ABはCに対して「この契約は無効だor有効だ!」とは言えないということです。=ABは善意のCに対抗できない

ちなみに虚偽表示や詐欺強迫の場合は「無効ではなく”取消できる”」でしたから。、
取消権者(取消できる人)は意思表示した本人もしくはその法定代理、承継人だけでしたが、
心裡留保の場合、心裡留保が無効となった場合は誰でもその無効を主張できることも重要ですよ!

※つまり、AB間が無効だった場合、無効は誰でも主張できるので、Cが善意だったとしても善意のCから「ABは無効だよね!」
と主張することはOK。(あくまでABからは善意のCに対抗できないというだけ)

Mr.OK(著者)
このあたりは取消と無効の違いを見てくれればさらに理解できますよ!

(通謀)虚偽表示とは?

(通謀)虚偽表示とは、意思表示をする者(表意者)が真意でないことを知りながら相手方と通じて(通謀して)する虚偽の意思表示をいいます。

例えば、Aが債権者から差押えを免れるためBと結託して自宅の建物売買契約を締結するような場合です。

Mr.OK(著者)
こうすれば債権者CはAから取立できなくなったりしますよね。Bと結託してBに所有権を譲渡しているように見せかけて 借金の取立から逃れたりするわけです。こういうのを通謀虚偽表示と言います。

細かい知識

通謀虚偽表示の効果

第94条
① 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
② 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない

民法94条1項は「相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効とする。」と定めており、虚偽表示は無効です。

心裡留保 通謀虚偽表示

さきほどの心裡留保においてはAB取引は原則有効でしたが、
通謀虚偽表示の場合、相手方も虚偽表示であることを認識しているので、相手方を保護する必要がないため「無効」となります。

Mr.OK(著者)
だって結託してるんだから。手を組んで悪いことをしてるんだから、ABで通謀虚偽表示したらそりゃ無効でいいでしょ!ってことです。

ただし心裡留保の場合は、Aだけが虚偽の表示をしているわけでBがそれを知らない(善意)だったりそんなこと知ることができない(無過失)だったり、
したらBを保護しないといけません。なので原則AB間は有効だけど、Bが悪意または有過失だったら無効でいいよね!ってことになります。そうなったらBを保護する必要はないですよね!

そして2項「前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」。

通謀虚偽表示における第三者

民法物権変動における第三者が一般的な意味での第三者と少し違ったのと同様、
通謀虚偽表示における第三者も少し異なりますので必ずマスターしておきましょう。

長くなるので、「通謀虚偽表示における第三者」については↓で解説しています。

まとめ

AがBに AB間は 取消前の第三者 取消後の第三者
心裡留保 その気がないのに表意 原則有効
Bが悪意または有過失の場合無効
善意の第三者には対抗できない(C優先・Aは取消できない) 先に登記したほう優先
通謀虚偽表示 ABが通謀して表意 無効 善意の第三者には対抗できない(C優先・Aは取消できない) 先に登記したほう優先

錯誤・詐欺・強迫の場合の第三者は「善意無過失」だとAは対抗できない!が基本でしたね。
本記事の心裡留保・通謀虚偽表示の場合「善意」(無過失までは不要)だとAは対抗できない!という違いがありますので
きちんと整理して覚えておきましょう。

 

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