この記事は「法定地上権・成立要件・成立する場合しない場合」について行政書士試験対策向けにわかりやすく解説しています。
法定地上権
法定地上権とは?
法定地上権とは、後述の要件がある状態で抵当権が実行され、土地とその土地上の建物の所有者が異なってしまう場合、
建物所有者のため、その土地に対して当然に成立する地上権を意味します。

というのと同じで「要件を満たせば当然成り立つ」ことを意味します!
つまり法定地上権は、ある要件を満たせば当たり前にその土地に成立する地上権のことです。
抵当権設定者と抵当権者の特約によっても排除できません。

裏を返せば、後述要件で地上権が成立しないと、建物所有者が守られない!ということです。
法定地上権は「建物所有者を守るために後述要件のもと当然に土地に対して成立する地上権」ということなんです。
法定地上権成立要件
土地及びその土地上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなされます(388条)。
②その状態のときに土地または建物に抵当権が設定される
③その抵当権が実行され、土地あるいは建物が別の所有者になる
④その建物について地上権が設定されたものと「みなす」(×推定する)
例えば、Aが、土地及び土地上の建物を所有し、土地にB銀行のため抵当権を設定した場合。
抵当権が実行され土地がCに売却されたときは、建物のため法定地上権が成立します。
図にするとわかりやすいですね。

AがBのために土地抵当権を設定してそれが実行され土地がC(別の所有者)になった。(建物には抵当権の効力が及ばないので建物はA所有のまま)
もし地上権が成立しないと建物を使用収益できなくなりますね!そこでAは新しい所有者Cに地上権設定契約を結べばいいのですが・・・
Cがもし悪い人だったら「だめ!」って言うとおかしなことになりかねません。
だったら法が守る!!ということで、法定地上権の登場です。
法定地上権があるおかげで、そんなことをいちいちしなくても、すでに建物を建ててるんだから土地の所有権が移っても引き続き建物を使用収益できるように、
「当然に」「土地に対して地上権が成立する」ようにしたわけです。
これが「法定地上権」なんです。「地上権が当然に成立する」から「法定地上権」なのです。
建物所有者を守るんです!めっちゃいいやつ!
法定地上権が設定された土地、その上の建物の関係性
地上権が設定されると、その土地の価値は下がり、その上の建物の価値は上がります。
これは別に試験対策上はそんなに重要じゃないですが、法定地上権を理解するのに便利なので覚えておくといいでしょう。

地上権が設定されていない状態で建物があっても、建物所有者は土地所有者にいちいち地上権設定契約を結ばないといけなくなります。
なので地上権が設定されると建物の価値は上がります。だって「土地を使える」権利がついてるわけですから。自動で元々オプションがついてるようなものです。
そりゃ価値上がりますよね?
一方、土地の場合は逆です。
「土地を使われる」オプションが勝手についてるわけですから、元々更地だったら自由に建物建てたりできますし、
地上権設定契約で特約でお金とれたりできたかもしれない。でもそれができないんですよね、そりゃ価値下がります。
土地を買うときに知らない誰かの地上権がついてる土地とついてない土地、どっちを買います?って話です。
そりゃついてないほうがいいでしょ?だから地上権が設定されると土地の価値は下がります。
もちろん例外もあるので基本的にはこうだと抑えておきましょう。
法定地上権が成立するケース
・土地とその土地上の建物が同一の所有者に属する場合に、「土地のみ」に抵当権が設定され、その抵当権が実行されたとき
・土地とその土地上の建物が同一の所有者に属する場合に、「建物のみ」に抵当権が設定され、その抵当権が実行されたとき。
・土地とその土地上の建物が同一の所有者に属する場合に、「土地と建物の双方」に抵当権が設定され、その抵当権の実行により土地と建物の所有者を異にするに至ったとき。
・建物の共有者の1人がその敷地を単独で所有する場合に、その土地に抵当権が設定され、その抵当権が実行されたとき。
なお、抵当権設定当時、土地とその土地上の建物が同一の所有者に属していれば、抵当権実行による競売時に一方が譲渡され同一の所有者に属さなくなった場合でも、法定地上権が成立します(大連判大12・12・14)。
また、抵当権設定当時、土地とその土地上の建物が同一の所有者に属していれば、たとえ土地につき所有権移転登記を得ていなくとも、法定地上権が成立します(最判昭48・9・18)。
法定地上権が成立しないケース
・更地である土地に抵当権が設定された場合に、その土地上に同一の所有者による建物が築造された後、その抵当権が実行されたとき(最判昭36・2・10)
・建物について抵当権を設定した当時、土地とその土地上の建物の所有者が各別であった場合に、その後、土地と建物が同一の所有者に属することとなった後に、その抵当権が実行されたとき(最判昭44・2・14)。
・土地に先順位抵当権が設定された当時、土地とその土地上の建物の所有者が各別であった場合に、その後、土地と建物が同一の所有者に属することとなった後に後順位抵当権が設定され、その後、先順位抵当権が実行されたとき(最判平2・1・22)。
・共有地上に建物を所有する共有者の1人が、自己の土地共有持分に抵当権を設定した場合に、その抵当権が実行されたとき(最判昭29・12・23)。
法定地上権成立の効果
法定地上権は、法定地上権の成立要件を満たす抵当権が実行され、土地とその土地上の所有者を異にするに至ったとき、建物所有者が地上権を当然に取得できます。
※地代は、当事者の協議によって定める。
→協議が成立しないとき、当事者の請求により裁判所が定める。
※対抗要件
・民法上の対抗要件→土地に対する地上権設定登記
・借地借家法上の対抗要件→土地上に所有する建物に対する所有権等の登記
まとめ
②その状態のときに土地または建物に抵当権が設定される
③その抵当権が実行され、土地あるいは建物が別の所有者になる
④その建物について地上権が設定されたものと「みなす」(×推定する)