行政法

【行政法】行政上の法律関係【公法と私法】判例別・わかりやすく解説

この記事は「行政上の法律関係」について行政書士試験対策向けにわかりやすく解説しています。

【基本スタンス】行政法は公法だけど、ケースバイケースで私法も適用する

法律は大別すると、私人相互の関係を規律した法律「私法」、国家機関と国民などの関係を規律した法律「公法と分類できます。

行政法は「国や公共団体が私人に悪さをしないための法律」なので「公法」としての側面が強いのですが、必要に応じてケースバイケースで民法などの私法に属する法律も適用することにされています。

Mr.OK(著者)
「0か100か」の杓子定規でははかれないのが法だったね!行政法も基本は「公法」っぽいんだけど「私法」が適用される場合もあるよ!とおさえておきましょう!フレキシブル(柔軟)にやってこうよ!っていう感じです。

では今から「フレキシブルな適用事例」を判例とともに見ていきます。

公法と私法

判例:公営住宅の使用関係

公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法(現:借地借家法)に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法及び借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。最判昭59・12・13

公営住宅の使用については、公営住宅法・条例が適用されるものの、私法上の法律関係と実質的に異ならない部分が多いから、公営住宅法および条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法および借地借家法の適用がある。

一見すると、
民法・借地借家法<公営住宅法・条例(こっち優先!)
っぽいけど、

原則:民法・借地借家法=公営住宅法・条例(特別の定めがない限り)
このように運用してるよ!ってこと

Mr.OK(著者)
公営住宅の使用関係において、公営住宅法やそれに関する条例という行政法(公法)があるんだけど、
実質使用するときは民法や借地借家法と同じような運用なんだから(家の貸し借りの契約とかはほぼ同じでしょってこと)、
私人間のときと同じように、民法・借地借家法・信頼関係の法理が適用されますよ!!ってこと。

つまり、公営住宅だからって公法的な何か特別なもんじゃないよ!っていう感じです。

判例:建築基準法(私法)優先判例

建物の相隣関係においては、民法でも相隣関係の規定があるが、建築基準法の規定を優先しましょう!という判例。

建築基準法65条は、防火地域又は準防火地域内にある外壁が耐火構造の建築物について、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる旨規定しているが、これは、同条所定の建築物に限り、その建築については民法234条1項の規定(建物を築造する場合には、境界線から50センチメートル以上の距離を存することを要するという規定)の適用が排除される旨を定めたものと解するのが相当である。判例 最判平元・9・19

建築基準法>民法234条
建築基準法→0mでもOK/民法234条→50cm以上離れてないとダメ

どっちを優先するの??→建築基準法
ということ。

Mr.OK(著者)
民法では50cm離さないと建物を並べちゃダメ!(相隣)って書いてるのに、
建築基準法では「0mでもOK」となってる。どっちなん!!?!?
となるけど、建築基準法優先でいいよ!ってこと。

【双方代理自己契約の判例】双方代理の規定((旧)民法108条)の類推適用

 (旧)民法108条 同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。

と自己契約と双方代理を禁止していました。この規定が、市長と市長が代表者を務める財団法人間の契約にも類推適用されるかについて、判例は類推適用を認めています。

普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表して行う契約締結行為であっても、長が相手方を代表又は代理することにより、私人間における双方代理行為等による契約と同様に、当該普通地方公共団体の利益が害されるおそれがある場合には、民法108条(双方代理)が類推適用されるが、議会が長による当該双方代理行為を追認したときには、116条(無権代理行為の追認)の類推適用により、議会の意思に沿って本人である普通地方公共団体に法律効果が帰属する。 最判平16・7・13

Mr.OK(著者)
自己契約・双方代理のルールは、長の行為にも適用されうる!と覚えておけばOk

【時効取得の判例】公共用財産も時効取得(民法162条)できるか

判例は、一定の要件を満たすことにより、公共用財産についても取得時効の成立を認めています。

公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、その物のうえに他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、右公共用財産については、黙示的に公用が廃止されたものとして、これについて取得時効の成立を妨げないものと解するのが相当である。 判例 最判昭51・12・24

Mr.OK(著者)
たとえば元々は公園だった場所でも、実際もう公園としての機能がなくなって誰も公園として認識できないような状態になっていて誰もそれに気づいてなくて、平穏かつ公然とAさんがその土地を利用し続けて10年たったらもうそれはAさんのものでいいんじゃん!ってこと。

用は公共用物の公園であってもそれがもう実質そんな機能をはたしてなくて、それによって誰も迷惑がかかってない状態だったら、
普通にその土地を占有してる人がいたら取得時効適用していいじゃない!ってこと。

【消滅時効の判例】消滅時効期間は?→民法の規定になる!

<消滅時効>
・債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間
・権利を行使することができる時から10年間

国を当事者とする金銭債権は公権であり、一般債権の消滅時効を定めた民法or会計法30条のどちらが適用されるかどうかについて判例をみていきます。

国の安全義務違反判例→民法適用

自衛官の息子を亡くした両親が国の安全配慮義務違反を理由として、国に損害賠償を請求する際、消滅時効期間は民法の規定するところによると判示してます。

思うに、国と国家公務員(以下「公務員」という。)との間における主要な義務として法は、公務員が職務に専念すべき義務並びに法令及び上司の命令に従うべき義務を負い、国がこれに対応して公務員に対し給与支払義務を負うことを定めているが、国の義務は右の給付義務にとどまらず、国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負っているものと解すべきである。

右のような安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものであって、国と公務員との間においても別異に解すべき論拠はない。

国が義務者であっても、被害者に損害を賠償すべき関係は、公平の理念に基づき被害者に生じた損害の公正な填補を目的とする点において、私人相互間における損害賠償の関係とその目的性質を異にするものではないから、国に対する右損害賠償請求権の消滅時効期間は、会計法30条所定の5年と解すべきではなく、(旧)民法167条1項により10年と解すべきである。

国の安全義務違反判例→民法適用

こちらも民法適用判例です。

思うに、国と国家公務員(以下「公務員」という。)との間における主要な義務として法は、公務員が職務に専念すべき義務並びに法令及び上司の命令に従うべき義務を負い、国がこれに対応して公務員に対し給与支払義務を負うことを定めているが、国の義務は右の給付義務にとどまらず、国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負っているものと解すべきである。

右のような安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものであって、国と公務員との間においても別異に解すべき論拠はない。

国が義務者であっても、被害者に損害を賠償すべき関係は、公平の理念に基づき被害者に生じた損害の公正な填補を目的とする点において、私人相互間における損害賠償の関係とその目的性質を異にするものではないから、国に対する右損害賠償請求権の消滅時効期間は、会計法30条所定の5年と解すべきではなく、(旧)民法167条1項により10年と解すべきである。最判昭50・2・25

国の財産の売り払い消滅時効判例→民法適用

国がその所有する財産のうち、公の目的で使用しない財産(普通財産)を売り払う際には、消滅時効期間は民法の規定するところによると判示してます。

国の普通財産の売払いは、国有財産法および会計法の各規定に準拠して行なわれるとしても、その法律関係は本質上私法関係というべきであり、その結果生じた代金債権もまた私法上の金銭債権であって、公法上の金銭債権ではないから、会計法30条の規定により5年の消滅時効期間に服すべきものではない。最判昭41・11・1

民法177条(不動産物件変動・不動産対抗要件)の適用判例

(旧)自作農創設措置特別法に基づく農地買収処分(国家が強制的に農地を買い上げを行うこと)については、民法177条の適用を否定しています。ただし、同法に基づく農地買収処分により、国が農地の所有権を取得した後は、民法177条の規定が適用されるとしています。

旧自作農特別措置法に基づく農地買収処分→民法177条適用なし

私経済上の取引の安全を保障するために設けられた民法177条の規定は、自作農創設特別措置法(自創法)による農地買収処分には、その適用を見ないものと解すべきである。最大判昭28・2・18

旧自作農特別措置法に基づく農地買収処分の農地買取後→民法177条適用あり

自創法は、買収の効果の発生までに権利関係の変動があっても、その承継人に対し、買収手続の効力が及ぶ旨を定めたにすぎず、国が買収処分により所有権を取得したにおいてまでも、法177条の適用を排除する趣旨のものではないと解するのが相当である。

国税滞納処分による差し押さえ→民法177条適用あり

国税滞納処分による差押えについて判例は、民法177条が適用があるとしています。

国税滞納処分においては、国は、その有する租税債権につき、自ら執行機関として、強制執行の方法により、その満足を得ようとするものであって、滞納者の財産を差し押えた国の地位は、あたかも、民事訴訟法上の強制執行における差押債権者の地位に類するものであり、租税債権がたまたま公法上のものであることは、この関係において、国が一般私法上の債権者より不利益の取扱を受ける理由となるものではない。それ故、滞納処分による差押の関係においても、民法177条の適用があるものと解するのが相当である。最判昭31・4・24

Mr.OK(著者)
このようにさっと覚えておくといいよ!

・旧自作農特別措置法に基づく農地買収それ自体→民法177条適用なし
・農地買収後→民法177条適用あり
・租税滞納処分に基づく差し押さえ→民法177条適用あり

地方議会議員の報酬請求権を譲渡できるか→できる!

地方議会の議員報酬は「公法上の権利という性質を有するためこれを譲渡することはできないのではないか」という点につき、判例は当該譲渡を認めています。

普通地方公共団体の議会の議員の報酬請求権は、公法上の権利であるが、公法上の権利であっても、それが法律上特定の者に専属する性質のものとされているのではなく、単なる経済的価値として移転性が予定されている場合には、その譲渡性を否定する理由はない。最判昭53・2・23

供託金払戻請求の却下の性質→行政処分(公法)と同じ!

弁済のために供託した金銭等を取り戻すためにその請求を供託官が受けた場合、この請求に対する供託官の権限はどのような性質なのかについて、判例は民法上の寄託契約の当事者的な地位にとどまらない(公法的な立場も含むよ!)としています。

もともと、弁済供託は、弁済者の申請により供託官が債権者のために供託物を受け入れ管理するもので、民法上の寄託契約の性質を有するものであるが、供託により弁済者は債務を免れることとなるばかりでなく、金銭債務の弁済供託事務が大量で、しかも、確実かつ迅速な処理を要する関係上、法律秩序の維持、安定を期するという公益上の目的から、法は、国家の後見的役割を果たすため、国家機関である供託官に供託事務を取り扱わせることとしたうえ、供託官が弁済者から供託物取戻の請求を受けたときには、単に、民法上の寄託契約の当事者的地位にとどまらず、行政機関としての立場から右請求につき理由があるかどうかを判断する権限を供託官に与えたものと解するのが相当である。したがって、右のような実定法が存するかぎりにおいては、供託官が供託物取戻請求を理由がないと認めて却下した行為は行政処分であり、弁済者は右却下行為が権限のある機関によって取り消されるまでは供託物を取り戻すことができないものといわなければならず、供託関係が民法上の寄託関係であるからといって、供託官の右却下行為が民法上の履行拒絶にすぎないものということは到底できないのである

弁済供託が民法上の寄託契約の性質を有するものであることから、供託金の払渡請求権の消滅時効は民法の規定により、10年をもって完成するものと解するのが相当である。最大判昭45・7・15

Mr.OK(著者)

A(債務者)→B(供託官)→C(債権者)
AがBに供託。CはBに「払い戻し請求」でBがAから預かっている供託金をもらう。

はずなのに・・・!

BがCに「理由がない」と拒否。

C「なんでやねん!」

供託官というのは「国が債務者に代わって返済を預かるよ!」という公的な行為(行政的な行為)の地位にあり、
供託官が「供託物払い戻し請求を却下!!」というのは「単なる供託物を取り扱う行為」ではなく「行政処分」といえる!
だから払い戻し請求を却下された側(C)は行政処分されたの同じだとしていいよ!ってこと。

公営住宅の入居者の死亡とその相続→相続できない

公営住宅の入居者が死亡した場合に、その相続人は、当該公営住宅を使用する権利を承継するのかについて、判例は否定しています。

公営住宅法は、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で住宅を賃貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とするものであって(1条)、そのために、公営住宅の入居者を一定の条件を具備するものに限定し(17条)、政令の定める選考基準に従い、条例で定めるところにより、公正な方法で選考して、入居者を決定しなければならないものとした上(18条)、さらに入居者の収入が政令で定める基準を超えることになった場合には、その入居年数に応じて、入居者については、当該公営住宅を明け渡すように努めなければならない旨(21条の2第1項)、事業主体の長については、当該公営住宅の明渡しを請求することができる旨(21条の3第1項)を規定しているのである。以上のような公営住宅法の規定の趣旨にかんがみれば、入居者が死亡した場合には、その相続人が公営住宅を使用する権利を当然に承継すると解する余地はないというべきである。最判平2・10・18

Mr.OK(著者)
簡単な話です。
基本、公営住宅は所得が低い人向けの住宅で所得が本当に低いかどうか等審査があった上で入居できるかが決まります。

たとえば、
Aさん(低所得者)→公営住宅入居
Aさんの子供B→金持ち

低所得者Aさんの子供Bが金持ちだということに全然あり得る話で、
そのAさんが亡くなったとして当然にBさんが相続できる!なんてことになるとおかしいことになりますよね。

当然、公営住宅は相続できません!

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