債権 民法

金銭債務の特則についてわかりやすく解説。法定利率・損害の証明等

金銭債務の特則についてわかりやすく解説しています。

金銭債務の特則とは?

金銭というのは、価値そのものであり、物(動産・不動産)のように損傷・滅失せず、
種類債権のように目的物の特定もありません。

そこで、金銭債務の不履行については、金銭以外の債務と異なり、特別の定めが設けられています。
債権債務関係の中でも例外的な位置づけなのが「金銭債務(相手にとっては金銭債権)」です。

・金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による(419条1項)
・金銭債務の不履行による損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない(419条2項)
・金銭債務の不履行による損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない(419条3項)

法定利率

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による(419条1項)

金銭債務の不履行による損害賠償(遅延利息)については、
民法416条による通常損害又は特別事情による損害によるのではなく、画一的に処理するため、年3分(3%)の法定利率としています。(419条1項本文、404条2項)。
ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率となります。(419条1項ただし書)。

Mr.OK(著者)
法定利率は年3%と決まっていますが、特約によって年10%等と変えることもでき、
その場合は特約(約定利率)を優先するということです。

利息制限法による制限

細かい知識になりますが、一応書いておきます。
ちなみに、金銭消費貸借契約(お金の貸し借り)には、利息制限法という特別法が適用されるため、約定利率が利息制限法による利率を超える場合には、その超える部分は無効となります。

Mr.OK(著者)
たまにニュースで「違法な利息をとるヤミ金融」とかやってるでしょ?ああいうのは、利息制限法違反の貸金業者のことです。

細かい知識

■利息制限法による利率

元本の額 利率
10万円未満 年20%
10万円以上100万円未満 年18%
100万円以上 年15%

損害の証明を債権者は負わない

金銭債務の不履行による損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない(419条2項)

通常、債務不履行による損害賠償を請求する場合、債権者は、損害の発生及びその額について証明責任を負いますが、金銭債務については、履行遅滞によって損害(遅延利息)は確実に発生することから、債権者は証明責任を負わないものとしました(419条2項)。

※帰責性の証明責任は債務者側にあります。あくまでここの証明責任は「損害の発生・その額の証明責任」の話なのでこんがらがらないようにしてくださいね!

不可抗力を理由とする抗弁はできない

金銭債務の不履行による損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない(419条3項)

金銭債務については、前述のように履行遅滞によって損害(遅延利息)は確実に発生することから、履行遅滞が絶対的な意味をもち、不可抗力によって履行遅滞となったことを理由に損害賠償の支払いを拒むことはできません(419条3項)。

例えば、台風によって交通機関が動かなくなったため、債務者A(お金を返す側・お金の借主)が近くの銀行に行けず、履行遅滞となったとします。
それでも債務者Aは、債権者B(お金を返してもらう側・お金の貸主)の損害賠償請求に対し、台風を理由に債権者Bの請求を拒絶できないのです。

Mr.OK(著者)
人にお金を返さない借金持ち逃げの常習犯が、お金を返すタイミングになって(履行期になって)、
「ごめん!財布盗まれたからお金返せない!」と言っても、「不可抗力をもって抗弁できない」ので、
貸している側(債権者)は「だからなに?金銭債務の特則”不可抗力をもって債務者は債権者に抗弁できない”で、そんな言い訳通用しないよ??」と言えちゃうわけですね!

Mr.OK(著者)
これ過去に記述でも出ていますので必ず覚えておきましょう。
金銭債務の特則は・・・
・損害の証明を債権者はしなくてよくて、
・債務者は不可抗力をもって抗弁できない!
この2点は特に重要です。

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