憲法

【憲法】人権の享有主体性。人権を持つのは誰?法人・外国人には適用されるのか?

人権の享有主体性、すなはち「人権とは誰が適用されるのか」についてわかりやすく解説しました。

人権の享有主体

「人権の享有主体」というのは、基本的人権が保障される主体のことを指します。
つまり、憲法は基本的人権を誰に認めているの?ということです。
それぞれ見ていきます。

日本国民

 憲法11条「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」

憲法11条が言うように、日本国民が人権の享有主体であることは明らかです。
なんとなくそれは当たり前のことだとわかりますよね。

では、日本国民とは何か?ということなのですが、

そして、日本国民たる要件は、「国籍法」により定められています。
憲法10条で「法律により定める」としていて、その「法律」というのが国籍法なわけです。

つまり、憲法は「日本人の定義は、法律に任せるよー!」としているわけですね。(つまり今後日本国民の定義・要件が変わる可能性もあるということです)。

さらに詳しく

「国籍法」によると日本国民たる要件というのは、

〇出生による取得
出生時に両親の一方が日本国民である場合
出生前に父が死亡した場合で、その死亡時に父が日本国民であった場合
日本で生まれ、両親がともに不明あるいは無国籍の場合
〇認知による取得
〇帰化による取得
帰化申請が提出され法務大臣の許可が下った場合

ここまで覚える必要はないですけどね!

未成年者も当然「日本国民」だから基本的人権は保障されるが…例外的な「パナーナリスティックな制約」がある。

未成年者も、いわずもがな当然「日本国民」なので人権の享有主体です。つまり未成年者も基本的人権が保障されています。
しかし、未成年者は成年者(大人)とは少し違って制約を受けているのはわかりますか?

たとえば、「未成年者はお酒を飲んではいけません」。
これはあなたも知ってると思いますが、これ、未成年者は制約を受けていますよね。

たとえば、成年者(大人)が不合理に「あなただけは飲酒してはいけません」などと国に言われたりしたら「基本的人権の侵害だーー!」と国を訴えることができるわけです。しかし、未成年者がお酒を飲むと法律違反になります。
つまり、未成年者は人権の享有主体性でありながら(基本的人権が保障されていながら)、一定の制約を受けているわけです。
喫煙の場合もそうですよね。

なぜこのような制約が正当化されるのでしょうか?

それは、未成年者は心身の成長途上で、年齢によっては物事をきちんと把握する能力もまだありません。
そういった未成年者が飲酒や喫煙をすると心身の成長に悪影響を及ぼす恐れが高く、「飲酒や喫煙は健康を害するリスクがある」といった判断も不十分なまま行ってしまう恐れもあります。
なのでそういった未成年者に対しては、法律によって「未成年者の健全な成長のために」一定の制約が許されるのです。
このような制約を「パターナリスティックな制約」と言います。

パターナリスティック??なんじゃそりゃ(*'▽')

パターナリスティックのパターというのは父親(pater(father))を意味します。
父親は子供に干渉しますよね。「宿題しろ」とか。そんな感じで、国家が父親のように未成年者(子供)に干渉するようなやり方を「パターナリスティック」というわけです。
なので、未成年者に対する基本的人権の制約を「パターナリスティックな制約」と呼んでいるのです。
たまーに試験に出るので覚えておいた方がいいでしょう。

外国人

日本国憲法は、実は外国人に関する人権を直接規定はしていません。
では、外国人には憲法による基本的人権の保障は及ぶのでしょうか?

及ぶと思います?
及ばないと思います?

 

答えは「及ぶ」が正解です。

 

基本的人権はというのは「人が人間であるが故に生まれながらに当然に有する基本的な権利」です。
そのため、性質上可能な限り外国人にも人権保障が及ぶと裁判では判事されているんですね。(マクリーン事件)

「性質上可能な限り外国人にも人権保障が及ぶ」ということですので、「性質上不可能な場合は、外国人には人権保障は及ばない」と反対解釈できますよね。

Mr.OK(著者)
反対解釈というのは、ある法令の規定をもととして、その規定にあることが書いてあることとは、その裏として、それと逆の場合には逆の効果が生ずるというような趣旨の規定をも含んでいるものと解釈する方法のことです。

ではどのような場合が及ばないのでしょうか?

外国人に及ばない人権保障

簡単なので、覚えてしまいましょう。

外国人に保障が及ばない人権
①入国する自由
②再入国する自由
③在留する自由
④社会権
⑤参政権(国政に参加する権利)

想像すれば簡単です。

①入国する自由については、現状を想像してみてください。誰でも簡単に外国人が入国できてます?
できませんよね。テロリストがいきなり日本に簡単に入国できたら怖いですよね。
当然、入国する自由は外国人には保障されていません。

②再入国する自由もありません。これは入国する自由がないので、再入国する自由も外国人には保障されていません。

③在留する自由も簡単に想像がつくでしょう。
ニュースなどを見ているとよくベトナム人等が「不法滞在」で逮捕されているのを見るのではないでしょうか?
当然ですね。

判例:マクリーン事件(最大判昭53・10・4)

【概要】
アメリカ国籍を有する在留外国人が在留更新の申請(ビザの更新申請)
→在留期間中の政治活動(ベトナム反戦運動)などを理由に法務大臣が不許可処分
→その在留外国人がその処分の取消しを求めて提訴。

【判旨】
・外国人は、憲法上、わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されていない。
・外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障を含むものではない。
→どの外国人を在留させるかどうかは国の裁量(自由な判断をしていい余地)の範囲内だ!!ということ。

ちなみに「出国する自由」は保障されています。
日本を出る外国人は「お好きにどうぞ」という感じですよね。
例えばたまたまテロリストが日本に紛れ込んでしまって、たまたま日本で捕まっていなかっただけだとします。
その人が「日本、出るわ」というのは「どうぞどうぞ」って感じですよね?
出国するのは自由なのです。

判例:森川キャサリーン事件(最判平4・11・16))

【概要】
アメリカ国籍を有する定住外国人(日本人と結婚)が韓国への海外旅行を計画し再入国の申請をした
→過去は再入国許可されていたが、指紋押捺拒否を理由に法務大臣が不許可処分
→その外国人が、その処分の取消しを求めて提訴。

【判旨】
・我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものではない。
→再入国自由は当然には憲法で外国人には保障されているものではない!

法人

日本国憲法は人権の享有主体として自然人である国民を想定しています。
なので、法人には基本的人権が及ばない・・・?
と初学者は思うかもしれませんが、法人にも基本的人権は及びます。

ただし、さきほどの外国人の場合と同様に、「性質上可能な限り、法人にも人権保障が及ぶ」とされています。
つまり、「性質上不可能な場合は、法人に人権保障は及ばない」と反対解釈することができます。

どんな場合が及ばないのでしょう?

裁判所は以下の判例で「営利法人」と「強制加入団体」の場合とで「性質は変わる」と判事しています。
ということで、判例を見た方が早いので判例を見てみます。

判例:八幡製鉄事件(最大判昭45・6・24)

【概要】
会社が政治資金を寄付することが会社の目的の範囲内の行為ではないとして取締役の責任が問われた。

【判旨】
・憲法3章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、法人にも適用されるものであるから、
・会社は、公共の福祉に反しないかぎり、政治的行為の自由の一環として、政党に対する政治資金の寄付の自由を有する。
・会社による政治資金の寄付は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎりにおいては、会社の目的の範囲に属する行為である。

八幡製鉄事件では、「法人も性質上可能な限り人権が及ぶんだから、政党に対する政治資金の寄付も自由でいいだろー!(公共の福祉に反しない限り)」と言っているわけですね。

しかし、強制加入団体については「自由ではない!(法人には人権保障が及ばない!)」と判事しています。

Mr.OK(著者)
強制加入団体というのは、脱退の自由がない団体のことです。
皆さんが受けようとしている「行政書士試験」。
これも行政書士になるには試験に合格後、「必ず行政書士会に所属しなければならない」です・
このような強制的に加入しなければならない行政書士会のような団体を「強制加入団体」と言います。
弁護士会や税理士会、司法書士会などもそうですね!

判例:南九州税理士会事件(最大判昭最判平8・3・19)

【概要】
税理士会が税理士法の改正を有利な方向に働きかけるための資金として会員から特別会費を徴収
→特定の政治団体に会費を寄付した
→税理士会に所属する税理士の1人が「私の信条に反する政治団体に勝手に寄付するとはなにごとだー!」ということで、
この寄付が税理士会の目的の範囲外の行為であるとして争われた。

【判旨】
・税理士会が政党など(政治資金規正法上の)政治団体に寄付することは、税理士会の目的の範囲外の行為である。
・政党などの政治団体に寄付をするために会員から特別会費を徴収する旨の税理士会の総会決議は無効である

強制加入団体については、営利法人(八幡製鉄みたいな法人)のように法人に人権が保障されているわけではないぞ!!
と判事したわけですね。

行政書士会や税理士会の会員(つまり行政書士や税理士)は、脱退の自由がないですよね。
税理士をやりたければ、必ず税理士会に所属しないといけないのですから。
税理士会に所属はしないけど、税理士をやることは不可能なのです。つまり税理士会には実質強制加入なわけですよ。

なのに、そんな税理士会が勝手に政治団体に寄付するなんて自由を認めてしまったら、各税理士の思想に反するような団体にも意に反して寄付されてしまう可能性がある。でも、税理士は脱退の自由がない。そんなのはおかしいので、強制加入団体の政治団体への寄付については自由ではなく、思想については「会員それぞれが自主的に決定すべきである」としたわけです。

あとはこんな判例もあります。

判例:群馬司法書士会事件(最大判昭14・4・25)

【概要】
阪神・淡路大震災で被害を受けた兵庫県司法書士会に3,000万円の復興支援拠出金を寄付するために会員から特別負担金を徴収する旨の総会決議がなされたため、当該寄付は、会の目的の範囲外の行為であり、総会決議は無効であると争われた。

【判旨】
・司法書士会は、その目的を遂行する上で直接又は間接に必要な範囲で、他の司法書士会との間で業務その他について提携、協力、援助等をすることもその活動範囲に含まれるというべきであり、阪神・淡路大震災が甚大な被害を生じさせた大災害であり、早急な支援を行う必要があったことなどの事情を考慮すると、その金額の大きさをもって直ちに本件拠出金の寄付が被上告人の目的の範囲を逸脱するものとまでいうことはできない。
→今回は、阪神淡路大震災なので、3000万円という寄付の額も緊急性・被災額の大きさからみて、ただちに法人の自由が認められない!ということはできない。
額の大きさによっては、なんでも自由というわけではないぞ!という解釈もできる。

つまり、

寄付に関しては、強制加入団体に関しては、会員には脱退の自由がないのだから、
その使い方や目的に関しては、慎重に判断して行わなければならないよ!ということです。
(つまり、法人に人権が保障されない例外ということ←だって、寄付するのは自由でしょ、本来。)

ということで、今回は「人権の享有主体性」について学習しました!

基本的には、国民・外国人・法人にも基本的人権は及びます。
しかし、外国人と法人に関しては及ばない場合もあるよ!

と覚えておくといいでしょう。それでは!God be with You!

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