人権における「制度的保障」についてわかりやすく解説してみました。
制度的保障とは?
人権規定の中に、直接人権を保障するのではなく、制度を保障することで間接的に人権を保障しようとする「制度的保障」というものがあります。
憲法上、個人の基本的人権には属さないが、一定の制度を保障することによって、内容的に国民の権利を保障する関係にあるもの。
どういう意味?とちんぷんかんぷんになる方も多いですよね。
簡単に言うと、「本当に守りたいものを、制度という外側の煙幕を使って守る!!」というイメージです。
まだわかりにくいと思いますので、「通常の人権規定」と比較してみます。物事は「同じ概念だけど違うもの」と比較するとわかりやすくなります。
直接的に守られる人権と制度によって間接的に守られる人権
たとえば、「法の下の平等」は憲法によって直接守られますよね。

人権侵害をされると、私たちが国民であれば自動的に備わる「憲法のパワー」によって、人権侵害を粉砕してくれるわけです。
たとえば平等権侵害が起これば「法の下の平等」が私たちを直接守ってくれます。これが直接的に守られる人権のイメージです。
一方、今回の「制度的保障」というのは、こういうイメージ↓

人権侵害をされると、私たちが国民であれば自動的に備わる「憲法が設定している制度・規定」(さっきは憲法で直接規定されてたけど、今回は制度)によって、人権侵害を粉砕してくれるわけです。
たとえば「政教分離規定」なんかが代表例です。
「政教分離しろー!」というのは、その規定だけを見ても何かを守っているわけではなさそうに見えますよね?「政治と宗教を分離せよ!」という規定に過ぎないのですから。
しかし、この規定を設定することによってある人権が守られているのです。それが「信教の自由(20条)」なのです。
まさに、「政教分離規定」という制度・規定によって、「信教の自由」が間接的に守られてるでしょ?
この説明を見た後で、最初に書いた「制度的保障」の定義をもう一度見てみましょう。
憲法上、個人の基本的人権には属さないが、一定の制度を保障することによって、内容的に国民の権利を保障する関係にあるもの。

これでわかりましたよね!
まだわからない方、こう考えればわかりやすいです。
間接的強制を防ぐための「制度的保障」と考えるとわかりやすい
会社における出勤時間なんかを考えるとわかりやすいと思います。
たとえば始業時間が9時の会社があるとします。
なので本来は9時までに会社に行けばいいわけです。8時50分に行こうが、8時30分に行こうが自由なはずです。
しかしその会社のある上司が「始業時間の30分前の8時30分に来ているのが望ましい。」なんて言ってると、
部下たちは上司に逆らうわけにはいかないので、みんな本当はギリギリに出勤したいのに8時半までに会社にいやいや出勤する、みたいな例を考えてみましょう。
これは出勤時間の自由が間接的に侵害されてるわけです。
上司は別に「何時に来てもいいけど、8時半にくるのが望ましい」と言っているだけですから。
それでも「望ましい」ということで、半強制的に8時半までに出勤させるわけですから、
「間接的に出勤時間の自由が侵害されている」わけです。
この出勤時間の自由を守るために「9時までに出勤すれば会社に何時にきてもいい制度」をセットすることが「制度的保障」になります。
要は、「出勤時間は9時」という制度だけでは「9時までにくればいいんだから、8時半にくるように設定してもいいじゃん」という上司のような人が現れたりするわけですよね。
でもきちんと制度として「9時までに出勤すれば何時にきてもいい制度」をセットすることで「出勤時間の自由」を保障するわけですよ。
制度としてきちんと「9時までに出勤すれば何時にきてもいい制度」を設定しておけば仮に上司が「8時30分に来るのが望ましい」と言ったとしても、
部下たちはこう反論できます。「いや、9時までに出勤すれば何時にきてもいい制度が社則にありますが・・・?」と。ここでいう社則は憲法のようなものですね。「憲法にきちんと制度があるんだけど?」と制度でもって、その中の「出勤時間の自由」を保障するわけです。
要は、制度的保障というのは「間接的な人権侵害を防ぐ」という重要な役割があるのです。
制度的保障で守られる人権
制度的保障で間接的に守られている人権に関しては以下を覚えておくといいでしょう。
政教分離原則(20条1項後段他)
大学の自治(23条)
婚姻制度(24条)
私有財産制度(29条)
地方自治制度(92条)
どれも試験に出ますし、法律家の基本として押さえておくべき事項ですよ!